【建物賃貸借契約条項解説】10 遅延損害金
1 「遅延損害金」とは
賃借人が金銭債務の履行を遅滞した場合に「遅延損害金」を定めることがあります。
遅延損害金の定めの有無は、家賃回収において重要な役割を果たします。
現行民法上、遅延損害金の利率は、特段の意思表示がない限り、原則として年率5%、商行為によって生じた商事債権については年率6%とされています。逆に言えば、これと異なる金額を合意することも可能です。
改正民法施行後は、年率3%とされておりますが、3年毎に変動するものとされています。
2 利率の定めについて
遅延損害金の利率については、年14.6%、日歩4銭(年14.6%と同義)、日歩10銭(年36.5%)などと定められることが多いと思われます。
この点、利息制限法の適用はありませんので、年36.5%という定めも有効です。
但し、あまりにも遅延損害金が高すぎると、暴利行為等を理由に、規定自体無効となる可能性もあるので注意が必要です。
3 家賃回収・建物明渡における意義
家賃回収・建物明渡の実務においては、発生した遅延損害金についてはいわば交渉材料として利用することが多いと思われます。例えば、遅延損害金を免除する代わりに滞納家賃の一括支払を求めたり、建物明渡の交渉において、任意退去をしてもらう代わりに、遅延損害金については免除する、という交渉を行うこともあります。
実際に回収まですることはそれほど多くないかもしれません。
但し、滞納金額が多くなればなるほど、遅延損害金の金額が多額となり、交渉における重要度が高まりますので、適正な遅延損害金利率を設定することは、賃貸管理においても重要です。
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目次:建物賃貸借契約条項解説
- 賃貸借の目的物
- 契約期間・更新条項
- 使用目的
- 更新料
- 賃料等の支払時期・支払方法
- 賃料改定・賃料増減請求
- 敷金一般
- 敷金返還債務の承継
- 館内規則・利用規約等
- 遅延損害金(本ページ)
- 賃貸人の修繕義務
- 契約の解除・信頼関係破壊の法理
- 保証金
- 賃借人たる地位の移転
- 原状変更の原則禁止
- 善管注意義務及び損害賠償
- 連帯保証人
- 反社会的勢力の排除
- 当事者双方からの期間内解約条項