【建物賃貸借契約条項解説】4 更新料
1.更新料の意義
更新料とは、賃貸借期間が満了し、賃貸借契約を更新する際に、賃借人から賃貸人に対して支払われる金員をいいます。法的性質としては、賃料の補充ないし前払いとする見解や、更新承諾の対価とする見解などがあります。
2.更新料の有効性
⑴ 消費者である賃借人から受領する更新料については消費者契約法の観点からその有効性が否定されることがあります。具体的には、賃料額や更新される期間に比して「高額に過ぎる」場合でなければ有効であるとされています(最判平成23年7月15日民集65-5-2269)。
上記最高裁の判例では、更新料が賃料の2か月分、更新期間は1~2年の事案でしたが、これをもって高額に過ぎるとはいえないとしました。
したがって、更新期間は1~2年間、更新料が賃料の1~2か月分であれば、有効と判断されるものと思われます。
⑵ 他方で、事業者である賃借人の場合には、消費者契約法の適用はありませんから、原則として有効となると思われます。公序良俗違反とされる余地がないわけではありませんが、かなり限定的だと思われます。
3.更新の種類と、更新料を支払うべき場合
⑴ 賃貸借契約が更新される場合としては、以下の3通りがあります。
- ①合意更新
賃貸借契約期間終了時に、改めて賃貸人と賃借人間で賃貸借契約を更新する旨の合意をすることです。賃貸借契約期間終了時に、改めて賃貸借契約が締結される場合がこれに該当します。 - ②自動更新
賃貸借契約時に合意した内容に基づき、賃貸借契約が更新されることです。
例えば、「賃貸借契約期間終了後6か月前までに、相手方に対して書面により更新しない旨の通知をした場合を除き、本契約は同一条件にて更新される」といったような自動更新条項を定めた場合です。この場合、当該条項に基づき契約が更新されることになります。 - ③法定更新
①、②のような合意更新や自動更新がない場合であっても、建物賃貸借契約の場合には、借地借家法26条1項の規定により、期間満了の1年前から6か月前までの間に更新拒絶の通知をしない場合には、従前と同一の条件で契約を更新<p したものとみなされます。これを「法定更新」といいます。
⑵ 更新料を支払うべき場合
上記のうち、①と②の場合には、更新料の支払義務があります。更新が合意に基づくものであり、その支払をすべきことが明らかだからです。
他方で、③については下級審裁判例で見解が分かれています。条項の書き方や内容によります。契約書においては、法定更新の場合にも更新料が発生する旨を記載した方がよいと思われます。
次のページ:5.賃料等の支払時期・支払方法
目次:建物賃貸借契約条項解説
- 賃貸借の目的物
- 契約期間・更新条項
- 使用目的
- 更新料(本ページ)
- 賃料等の支払時期・支払方法
- 賃料改定・賃料増減請求
- 敷金一般
- 敷金返還債務の承継
- 館内規則・利用規約等
- 遅延損害金
- 賃貸人の修繕義務
- 契約の解除・信頼関係破壊の法理
- 保証金
- 賃借人たる地位の移転
- 原状変更の原則禁止
- 善管注意義務及び損害賠償
- 連帯保証人
- 反社会的勢力の排除
- 当事者双方からの期間内解約条項