【建物明け渡し(立ち退き)解決事例】管理会社の家賃回収行為が脅迫に該当するとして借主から家主に逆に損害賠償請求を受けたものの、その後明渡請求が認められた事例
【物 件】福岡県内のファミリー用マンション
【借 主】個人
【滞納月数】半年
【特 徴】借主が脅迫行為により損害を被ったとして逆に損害賠償請求をしてきた事例
【解決内容】明渡を命じる判決が下され、明渡が実現。損害賠償請求は認められず。
1.事案の概要
物件は福岡県内のファミリー用マンションです。家賃滞納が続いたので、管理会社が再三にわたり物件に訪問して家賃の督促を行ったのですが、その後も支払がありませんでした。そこで、赤坂門法律事務所にて明渡訴訟を受任し、直ちに提起しました。
訴訟において、借主側(被告側)が、「管理会社の執拗かつ脅迫的な家賃督促により、恐怖を感じ、PTSDを発症した。家主に対する損害賠償請求権と家賃を相殺する」と主張したことから、損害賠償請求権の存否について争いが生じ、賃料請求及び明渡請求が認められるか否かが訴訟で審理されました。
2.解決までの経緯
訴訟提起後、借主から損害賠償請求の主張が出たことから、家主側代理人として、借主が主張するような脅迫行為がそもそも存在しないことを主張立証しました。借主側からは、診断書やカルテが提出され、裁判所における証拠調べ(尋問)を行うことになりました。
しかし、借主が、尋問期日に裁判所に出頭せず、裁判は開かれませんでした。結局、その後借主が裁判所に出廷することは無かったことから、そのまま借主に対して明渡を命じる判決が下されました。なお、損害賠償請求が認められなかったのはいうまでもありません。その後、被告はそのまま連絡が取れなくなり、部屋も夜逃げ状態であったため、強制執行による明渡を実現しました。
3.弁護士コメント
本件のように、「家賃督促行為が脅迫的であり、そのためにPTSDになった」という主張が借主側から主張されることは珍しくありません。しかし、そのような主張が認められることについては高いハードルがあることもまた事実です。単なる言いがかりといった場合もありますので、借主からの主張に慌てることなく、粛々と対応することが重要です。
なお、家賃督促行為であっても、「職場に家賃滞納の事実をばらす」などといった脅迫的言辞を用いたり、部屋のドアに他の入居者から見える形で、「家賃を支払いなさい」といった張り紙をすることは違法です(この2つは、興梠が実際に見聞きした事例の一つです)。経験上、脅迫的言辞を用いても問題の解決にならないことがほとんどです。生活に困窮している借主に対しては、市役所の福祉窓口を案内するなどして、まずは借主様ご本人の生活を立て直す方向での対応をする方が、家賃回収の観点からは望ましいです。それでも解決しない場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。
※守秘義務の関係上、全体の趣旨を変えない範囲で、事案の内容等を変更しています。