【建物明け渡し(立ち退き)解決事例】ペットの無断飼育を訴訟において立証し、借主退去に至った事例
【物件】政令指定都市郊外の一軒家
【状況】長年にわたり支払遅延が生じている状況(但し、相談時には全額滞納解消済み)
【その他】十数年来にわたり、家賃滞納、建物の無断増改築(壁の塗り替えなど)やペット飼育をめぐるトラブルが続いており、家主が賃借人に対して建物からの退去を求めていた事例
1.依頼に至った経緯
家主様は、十数年来、それまで住んでいた政令指定都市の一戸建てのご自宅を賃貸されていました。しかし、借主の方からの理由なきクレーム等のトラブルに長年悩んできたのに加え、借主が家主様に無断で建物を増改築するなど、長年にわたる契約違反行為に悩んでいました。
それに加え、家賃滞納が恒常的に生じていたことや、近所から犬の声がうるさいとのクレーム、近所との数々のトラブルなどが生じていたことから、借主を退去させたい、問題を解決したいとのことで、当事務所(赤坂門法律事務所)に相談され、訴訟受任となりました。
2.訴訟の経過
当方から、①借主が一軒家の建物部分を無断で増改築していること、②家主に無断で犬を飼育していることや、犬の飼育について近所からのクレームが発生していることを理由に、裁判所において賃貸借契約の解除を主張しました。
先方からは、①については従前承諾があったこと、②については、そもそも犬を飼育していない、といった反論がありました。
3.ペット(犬)を飼育していることの立証
当事者双方の主張のなかで特に問題になったのは、②ペット(犬)を無断で飼育しているのではないか、という点です。賃借人が否定していることから、当方から裁判所に対して積極的に主張立証を行う必要がありました。
「狂犬病予防法」(参照:条文)は、犬の飼い主に対し、生涯1回の登録と、毎年1回の狂犬病注射を行うことを義務付けています。そこで、裁判所の調査嘱託を用いて、①借主が物件にて犬を飼育している旨の届出をしているのか、②狂犬病注射を行っているのか照会しました。すると、借主が小型犬を数頭飼育している旨の届出があり、直近でも狂犬病注射を行っている旨の回答があり、借主が犬を飼育していることが、証拠上明らかになりました。
その後、裁判所の和解勧試を経て、賃借人が退去することを前提とする裁判上の和解が成立しました。
4.弁護士のコメント
本件は、賃借人に家賃滞納以外の契約違反行為があったことから、裁判所の手続きを通じて違反行為の立証をしたことによって、家主様の意向通りの解決ができた事例です。
家賃滞納以外の違反行為を理由とする解除においては、違反行為の立証というハードルがありますが、裁判所の手続等を利用することで立証できる場合もあります。また、無断増改築や無断の原状変更については、契約書に書面による承諾を必要とする旨の規定を盛り込むことで、立証の負担を軽減することができます。
デジタル機器の進化により、証拠の確保も容易になりつつあります。まずは賃貸問題に関して豊富な経験を持つ弁護士にご相談頂くことが肝要かと思います。
※守秘義務の関係上、事案の詳細について変更しています。