【明渡請求訴訟事件の実務】3 相手方への配慮
3 相手方に対する配慮
明渡請求訴訟においては、賃料滞納が伴う場合、多くが経済的弱者であり、生活困窮者です。家賃を滞納しているということは、家賃が不相当に高額でない限り、生活保護受給が相当な場合が多いというのも実情です。
賃借人と連絡が取れる場合には、行政機関等の相談窓口(市役所の福祉課や社会福祉協議会)に誘導することが必須といえます。
また、入院中の賃借人については、病院のソーシャルワーカーなどと連携して今後の居住先を確保することになります。この場合、賃借人に身寄りがなく財産等もない場合には、一度生活保護受給手続をすることで、退院後の住居を確保させる必要もあります。
裁判手続や強制執行手続により退去させることは、手続きとしては難しくありません。しかし、費用もかかりますし、賃借人にとっても酷です。生活を保障する制度は様々にありますので、そちらを案内するのも紛争に関わる弁護士としての責務ともいえます。
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目次
- (表紙)家賃滞納に基づく明渡訴訟について弁護士が解説します
- 【明渡請求訴訟事件の実務】1 建物明渡請求訴訟の全体像
- 【明渡請求訴訟事件の実務】2 明渡請求訴訟の特徴 (1) 迅速性
- 【明渡請求訴訟事件の実務】2 明渡請求訴訟の特徴 (2)当事者の特定
- 【明渡請求訴訟事件の実務】2 明渡請求訴訟の特徴 (3)物件の特定
- 【明渡請求訴訟事件の実務】2 明渡請求訴訟の特徴 (4)送達の問題
- 【明渡請求訴訟事件の実務】2 明渡請求訴訟の特徴 (5)強制執行における問題点
- 【明渡請求訴訟事件の実務】3 相手方への配慮(本ページ)
- 【明渡請求訴訟事件の実務】4 弁護士相談のタイミングと弁護士相談の前に行うべきこと
- 【明渡請求訴訟事件の実務】5 弁護士に依頼するのに適した案件
- 【明渡請求訴訟事件の実務】6 弁護士相談の際の留意点(必要資料と解決方法)
- 【明渡請求訴訟事件の実務】7 明渡請求の当事者の検討
- 【明渡請求訴訟事件の実務】8 請求権者(賃貸人・所有者)の特定(1)
- 【明渡請求訴訟事件の実務】9 請求権者(賃貸人・所有者)の特定(2)
- 【明渡請求訴訟事件の実務】10 明渡対象物件の特定
- 【明渡請求訴訟事件の実務】11 相手方との交渉
- 【明渡請求訴訟事件の実務】12 訴訟提起の判断基準
- 【明渡請求訴訟事件の実務】13 占有移転禁止の仮処分の要否
- 【明渡請求訴訟事件の実務】14 訴訟提起にあたっての考慮事項(手段選択)
- 【明渡請求訴訟事件の実務】15 訴訟手続~①訴えの提起「管轄・手数料」~