【明渡請求訴訟事件の実務】2 明渡請求訴訟の特徴 (5)強制執行における問題点 

 被告に対する明渡を命じる判決が下されても、被告が任意に明け渡さない場合や、被告が行方不明の場合には、明渡の強制執行手続により明け渡しを実現する必要があります。明け渡しの強制執行手続きを経ないで、被告の同意を得ることなく、建物の中の荷物を撤去したり、土地上の建物を収去したり、部屋の鍵を交換する行為は、原則として自力救済として違法となり、民法上の不法行為を構成することになります。
 明渡強制執行の手続きは、一般的には、
 ① 明渡強制執行の申立
 ② 事前準備
 ③ 明渡催告
 ④ 断行手続
 以上の流れをとります。
 明渡強制執行の手続きは、正確には、執行官に対する、不動産の明渡又は引渡しを求める手続です。全体として、裁判所の執行官の主導により手続きが行われますので、執行官とのコミュニケーションをとることが大切です。
 また、全体の流れの中では、事前準備が重要となります。事前準備においては、開錠の際の業者、執行業者、立会人の手配といったものが必要ですが、これらの業者を知らなければ執行官が手配してくれます。
 加えて、明渡催告等の手続きの中で、債務者が要保護者であった場合(例えば重病を患っている場合や認知症の方、子供がいる家庭)については、行政機関の連携が必要です。執行官が連携の手配してくれることも多いですが、執行官によってはこの点を事実上債権者の判断に委ねる場合があるので、事前に調整が必要な場合があります。要保護者がいる場合には、断行手続がいわゆる過酷執行として不能とされる場合があり、この場合には一からやり直しになりますので、注意が必要です(但し、執行不能になった場合でも、行政機関の連携等により任意退去が実現する場合がほとんどです)。

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目次

投稿日時: (約4年11ヶ月前)

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よくあるご質問

見積もりを取ることは可能でしょうか?

ご相談いただければ可能です。

ご相談内容を踏まえてお見積りさせていただきます。
見積もりは無料となっております。事案によって請求額は異なりますので、まずはご相談ください。

退去してもらうまで、どの程度の時間がかかるものでしょうか?

当事務所での解決までの平均期間は、4か月程度です。但し、弁護士が受任したことで、1カ月程度の早期解決に至ることもあります。

家賃滞納による明渡請求は、家賃滞納自体に争いが無い場合には、強制執行手続による退去完了まで、以下の経過をたどります。

  1. 内容証明郵便による契約解除通知送付(受任から3日~1週間程度)
  2. 訴訟提起(内容証明郵便送付日の翌日~2週間程度)
  3. 第1回期日(訴訟提起日から1ケ月~1ケ月半程度)
  4. 判決期日(第1回期日から1週間~2週間程度)
  5. 強制執行申立(判決期日から2週間~1ケ月程度)
  6. 断行手続(強制執行申立から1ケ月~1ケ月半程度)
  7. 退去完了

強制執行手続のうち、断行手続(裁判所の手続により、荷物を搬出・鍵の交換等を行う等の方法で強制的に明け渡しを実現する手続)によって退去が完了する場合、受任から終了まで概ね4ケ月~5ケ月程度の期間が必要となります。

但し、賃借人が行方不明の場合などを除き、強制執行の断行手続に至るケースは多くありません。訴訟提起後、強制執行手続に至るまでに退去するケースの方が圧倒的に多いというのが実情です。
弁護士が家主様の代理人に就任したことにより、1カ月程度で退去に至るケースもあります。
これらの早期解決案件を含めた弊事務所での平均解決期間は、受任から概ね4ケ月程度です。

【2022年10月11日更新】

司法書士に頼むのとどう違うのですか?

建物明渡請求訴訟について、司法書士は原則として代理人になれません。

弁護士と司法書士の違いは、端的にはその権限に違いがあります。

弁護士は、すべての訴訟事件について代理人として活動することができます。
他方で、司法書士は、訴訟事件について原則として代理人となる権限がありません。
認定を受ければ訴額140万円以下の事件について代理人として活動することはできます。しかし、その場合でも、簡易裁判所の事件での代理権しかなく、地方裁判所での代理権限はありません。
不動産明渡請求訴訟は地方裁判所が管轄です。司法書士は地方裁判所における代理権がありませんし、強制執行手続きについては、司法書士は代理人にはなれません。
不動産明渡請求については、司法書士が大家様や管理会社様に代わって借主と交渉することもできません。

借り主がどこに行ったか不明で連絡も取れないのですが、それでもお願い出来ますか?

可能です。法的手続きを進めるうえで大きな問題はありません。

借り主が所在不明で連絡も取れないということは、もはや話し合いでは解決できません。法的手続きを執るしか無い場合がほとんどだと思われます。
そのような場合に適した法的手続きを進めることで、ほとんどの場合、強制的に退去させることが出来ます。
但し、連絡も取れない場合には、家賃の回収については困難な場合がほとんどです。

手続き中、借主が直接自分の所に来て話したいと言ってきた場合にはどうしたらよい?

毅然と拒否し、弁護士と話すよう伝えて下さい。

弁護士が受任した場合は、全て弁護士を通していただく必要があります。大家さんご本人が直接話すとどうしても甘いことを言ってしまったりして、それを逆手に取られ、状況がこじれることがあるからです。
我々が借主様からお話を伺った場合には、通常依頼人たる大家様にご報告申し上げ、それで対応を協議するという形になります。
ご依頼頂いている以上、「弁護士を通してほしい」と言って頂いて構いませんので、まず直接の話し合いは避け、弁護士と話すように伝えてください。

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