【建物明け渡し(立ち退き)解決事例】逮捕勾留された借主に対する明渡請求
1.事案の概要
物件:福岡市内のアパート
賃料額:4万円程度
滞納期間:受任時3か月程度
その他:借主が逮捕・勾留
2.解決までの経過
賃料を滞納している借主が刑事事件で逮捕勾留されてしまい、今後借主から支払の見込みがなく明渡請求をお願いしたいとのことで、オーナー様よりご相談のうえ受任しました。
この借主には、連絡が取れる身寄りや連帯保証人がおらず、任意交渉の余地も無かったことから、直ちに建物明渡請求訴訟を提起しました。
借主が勾留されている場合に建物明け渡し訴訟手続を進めるにあたって問題となるのが裁判書類の送達の問題です。
勾留場所が判明しない場合には公示送達の手続きを進める場合もありますが、一般的には法務省に対して在監の確認をとる場合があり、時間がかかります。
本件の場合、借主から家主様宛の手紙が届いており、手紙に勾留場所が記載されていたことから、無事勾留場所へ裁判書類を送達することができました。
訴訟手続中も借主は釈放されることがなかったため。借主に対して建物明け渡しを命じる判決を取得したのち、強制執行手続に至るまで、粛々と手続を進めていきました。
借主は強制執行手続終了直後に釈放され、一度私のもとに連絡が入りました。
借主に対しては、住居については既に強制執行手続きにより明け渡しが完了していることを説明したうえで、市役所の福祉窓口を案内しました。
まもなく住居が確保できたとの連絡が入りました。
3.弁護士コメント
勾留された借主に対して明け渡しを求める訴訟は珍しくありません。
刑事事件を起こした借主に対しては、大家様も借主の立ち退きを希望する場合が多く、当事務所(赤坂門法律事務所)においても同様の案件を数多く取り扱っています。
勾留により滞納賃料の支払が見込めない場合には、速やかに明渡請求訴訟を提起してその損害を最小限に抑えることも必要です。
勾留された借主に対する明け渡し訴訟を提起する際に問題になるのは、裁判書類の送達場所です。
勾留されている場所が判明している場合には、判明した拘置所、警察署又は刑務所の長宛に送達を行うことになります。
しかしながら、勾留されていることは知っているがどこか分からない、という場合には、勾留されている場所を調べる必要があります。代理人弁護士であれば、法務省に弁護士会照会を行うことでその所在を把握できます(ただし、照会から回答を受けるまで3週間から1か月くらいかかります)。
釈放後の住居の確保という問題もあります。しかし、多くの場合、行政の福祉窓口等で対応できます。
この件も、釈放後速やかに住居が決まりましたし、同種別件においても同様の取扱いがされているようです。
逮捕勾留されているからといって相談を躊躇すると、損害が拡大する可能性が高いです。賃貸問題の経験豊富な弁護士に速やかに相談する必要があります。
また、借主の釈放後の住居についても、多くの場合、行政機関の援助により解決される問題です。
※守秘義務の関係上、事案の詳細について変更している部分があります。