【建物明け渡し(立ち退き)解決事例】物件に居座る前所有者の妻に対する明渡請求
【物 件】福岡県内の一軒家
【占 有 者】前所有者の妻
【特 徴】物件購入時に前所有者の妻が退去するはずだったのに拒否
【解決内容】訴訟提起し判決となった後に任意退去
1.一軒家を購入した夫婦からの依頼
ご依頼者は自宅用に中古の一軒家を購入したご夫婦です。
不動産の前所有者は男性で、不動産売買契約時には、夫婦で居住していました。契約締結の際、物件決済時までには空き家の状態で明け渡すことになっていましたが、土壇場で妻が拒否。事情もあり、物件明渡未了の状態で決済に至りました。
その後赤坂門法律事務所へ相談があり、当方から内容証明郵便を送付した後も連絡や反応が無かったことから、妻に対して物件を明け渡すよう求める明渡請求訴訟を再場所に提起しました。
2.妻に対する明渡請求訴訟の提起
妻に対して明渡請求訴訟を提起した後、相手方(占有者)である妻から連絡が入りました。「退去はしたくない、夫が勝手に家を売却して納得できない」、などと主張していました。
しかしながら、所有権は既に新所有者に移転しており、登記も完了しています。また、妻が退去に同意していないとしても、所有者である夫は、妻の了解なく不動産を譲渡することができます。
これらのことを弁護士から説明しましたが、なかなか納得して頂けない状況が続きました。前所有者である夫や、仲介に入った不動産会社からも何度も説得をしてもらいましたが、それでも出ていかない状態が続きました。
結局、裁判所における第1回目前の段階で退去には至らず、退去されていない状態で第1回期日を迎えました。
第1回期日には妻が出廷してくることが予想されましたが、出廷は無く、その後妻に対して明け渡しを命じる判決が下されました。
3.任意での退去
妻の抵抗が強硬で、判決後、強制執行手続となるだろうと予想していたのですが、判決後不動産会社を通じて「不動産はすぐに明け渡す」との連絡が入りました。判決が出たことで、遂にあきらめた、という様子でした。
その後まもなく、妻が引っ越し業者を連れてきて自宅の中の荷物を全て搬出し、無事明渡完了となりました。
4.本件のポイント
本件は、中古住宅を取得したものの、前所有者の家族が退去しなかったために明渡訴訟に発展したケースです。このように、当初は空家の状態で明け渡すことが予定されていた にも関わらず、決済時まで明渡が実現せず、訴訟に発展することがよくあります。
例えば、夫婦間で離婚紛争が生じていた場合などは、夫婦の一方当事者が売却を予定していた物件の明渡を拒否して離婚条件を有利に持っていこうとする、といったケースもあります。
しかしながら、いくら夫婦といえども、所有者が物件を譲渡し、他人のものになった以上、配偶者がそこに住み続けることは原則としてできません。とはいえ、一旦紛争が生じた場合には、金銭的・精神的負担を余儀なくされます。
明渡がなされるのか不透明な場合には、明渡が完了しない場合には白紙撤回とするとか、明渡に必要な費用は弁護士費用も含めて売主の負担とするといった条項を売買契約書に盛り込むことを検討した方が良い場合もあります。
よくある明渡の一例としてご紹介させて頂きました。