【建物明渡(立ち退き)解決事例】 駐車場契約につき、車を駐車していないとして駐車料支払を拒否されたものの、車両を駐車していないというだけでは明渡がなされたとはいえず、賃料請求と明渡請求が認められた事例
【物 件】福岡市内の平面駐車場
【特 徴】駐車場契約のみ
【手 続】内容証明送付後連絡が無いので訴訟提起
【解決内容】訴訟において、明渡を内容とする和解成立
1.駐車場契約のみで、駐車料を滞納
物件は福岡市内の平面駐車場です。駐車料の滞納があり、滞納が3か月に至ったので、駐車場のオーナーが借主に対して明け渡しと滞納賃料の支払を求めました。賃借人は「車はずっと駐車しておらず賃料支払義務はない」としてこれを拒否しました。
賃貸借契約においては、「賃貸借契約の解約は書面によって行われなければならない」「明け渡しは賃貸人及び賃借人双方の立会いのもとで行われるものとする」旨記載されていました。オーナー及び管理会社は、書面による解約の意思表示や退去立会がないことから、賃料請求や明渡処理等の対応に頭を悩ませており、赤坂門法律事務所に明渡請求と賃料請求の依頼がありました。
2.内容証明郵便の送付及び明渡訴訟の提起
まず、賃借人に対して、内容証明郵便にて、物件の明渡を求めました。
その際、賃貸借契約を解約して明け渡しを行う意向があるなら、書面による解約の意思表示を行って頂きたい旨伝えました。
しかし、賃借人は、内容証明にも反応せず、電話連絡をしても応答がありませんでしたので、駐車場の明渡と賃料の支払を求めて訴訟提起しました。
3.明渡と賃料支払義務を認める旨の訴訟上の和解成立
訴訟提起後、賃借人から答弁書(反論書面)が提出され、その中に「4月から車を駐車していないのだから、4月1日時点で明渡が完了している。したがって、賃料支払義務も無い」旨の主張が展開されました。
当方からは、賃貸借契約において賃貸借契約を解約する意思表示を行うためには書面による意思表示が必要とされていることを主張し、書面による意思表示が無い限りは明け渡しがなされたとは認められない旨主張しました。
その後、裁判官による和解が提案され、被告が答弁書を提出した時点で書面による解約の意思表示があったとして、その時点で駐車場の明渡が完了し、その日までの賃料支払義務が発生するとする和解が成立しました。
4.駐車場契約における明渡の意思表示について
駐車場、特に平面駐車場については、建物と異なり鍵が無く、占有しているかどうかの客観的な基準が認めがたいため、どのような場合に明渡が認められるかという点が問題になります。車両は常に駐車しているわけではなく、外から占有の有無を把握することが難しいからです。
この点、駐車場の明渡については、その客観的基準を定めるため、書面による解約の意思表示や立会いの有無により決定するのが一般的です。
賃貸借契約にて明渡の手順や基準を定め、その定めに従って明渡手続を進めるべきですし、紛争になった場合には、書面による意思表示が無いことを主張することになると思われます。
※守秘義務の観点から、事案の趣旨を損なわない限度で実際の事案とは内容を変更しています。