【家賃滞納・建物明渡専門弁護士による契約条項解説】19 当事者双方からの期間内解約条項

【期間内解約の条項例】

第〇条(期間内解約)
1 賃借人は、賃貸人に対して少なくとも30日前に解約の申入れを行うことにより、本契約を解約することができる。
2 前項の規定にかかわらず、乙は、解約申入れの日から30日分の賃料(本契約の解約後の賃料相当額を含む。)を甲に支払うことにより、解約申入れの日から起算して30日を経過する日までの間、随時に本契約を解約することができる。
3 賃貸人は、賃借人に対して、6か月前に予告することにより本契約を解約することができる。但し、正当事由が存在する場合に限る。

【期間内解約条項の解説】

1 趣旨

 期間の定めのある建物賃貸借契約においては、原則として、解除事由が無い限り、契約期間が満了するまで契約を一方的な意思表示で解約することはできません。
 しかしながら、
 (1)賃借人が任意に解約できる旨の合意があれば、当該条項に従って解約できます(民法618条及び同法617条参照)。
 (2)賃貸人が任意に解約できる旨の合意がある場合には、正当事由がある場合には、解約が認められます(借地借家法27条・同法28条)。
  以下、説明します。

2 条項の内容

(1) 賃借人からの期間内解約を認める旨の規定
 賃貸借契約に関する民法上の規定は、原則として任意規定(当事者間の合意があればそれによる)とされています。
 したがって、期間の定めがある建物賃貸借契約であっても、賃貸借契約書にその旨の合意があれば、その定めにしたがって賃借人から任意解約することができます。また、「30日前」などの解約申入日から終了日までの定めがないときは、民法617条の規定により、解約申入れの日から3か月の経過をもって終了することになります。

(2) 賃貸人からの期間内解約を認める旨の規定
 賃貸借契約に関する民法上の規定は、原則として任意規定(当事者間の合意があればそれによる)とされていますが、賃貸人からの期間内解約については、借地借家法の規定による制限があります。
 つまり、賃貸人による期間内解約を認める規定があったとしても、その内容は無制限に認められるわけではありません。賃貸人からの解約申入れは借地借家法27条により、解約の申入れの日から6か月経過後に終了するものとされ、また、この解約申入れは、借地借家法28条により、正当事由が無いと解約申入れは認められません。
 なお、賃貸人からの任意解約権を認める合意は賃借人に不利な合意なので、借地借家法30条に違反し無効ではないかという論点があります。この点裁判例は分かれていますが、解約を留保する特約がある場合には解約申入れにより終了する賃貸借になるが、正当事由の存在を必要とするから必ずしも賃借人に不利とはならず原則として有効とするのが一般的な見解です。但し、個別の事情(契約締結の経緯等)によって無効とされる可能性もありますので注意が必要です。

目次:建物賃貸借契約条項解説

  1. 賃貸借の目的物
  2. 契約期間・更新条項
  3. 使用目的
  4. 更新料
  5. 賃料等の支払時期・支払方法
  6. 賃料改定・賃料増減請求
  7. 敷金一般
  8. 敷金返還債務の承継
  9. 館内規則・利用規約等
  10. 遅延損害金
  11. 賃貸人の修繕義務
  12. 契約の解除・信頼関係破壊の法理
  13. 保証金
  14. 賃借人たる地位の移転
  15. 原状変更の原則禁止
  16. 善管注意義務及び損害賠償
  17. 連帯保証人
  18. 反社会的勢力の排除
  19. 当事者双方からの期間内解約条項(本ページ)
投稿日時: (約2年6ヶ月前)

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よくあるご質問

見積もりを取ることは可能でしょうか?

ご相談いただければ可能です。

ご相談内容を踏まえてお見積りさせていただきます。
見積もりは無料となっております。事案によって請求額は異なりますので、まずはご相談ください。

退去してもらうまで、どの程度の時間がかかるものでしょうか?

当事務所での解決までの平均期間は、4か月程度です。但し、弁護士が受任したことで、1カ月程度の早期解決に至ることもあります。

家賃滞納による明渡請求は、家賃滞納自体に争いが無い場合には、強制執行手続による退去完了まで、以下の経過をたどります。

  1. 内容証明郵便による契約解除通知送付(受任から3日~1週間程度)
  2. 訴訟提起(内容証明郵便送付日の翌日~2週間程度)
  3. 第1回期日(訴訟提起日から1ケ月~1ケ月半程度)
  4. 判決期日(第1回期日から1週間~2週間程度)
  5. 強制執行申立(判決期日から2週間~1ケ月程度)
  6. 断行手続(強制執行申立から1ケ月~1ケ月半程度)
  7. 退去完了

強制執行手続のうち、断行手続(裁判所の手続により、荷物を搬出・鍵の交換等を行う等の方法で強制的に明け渡しを実現する手続)によって退去が完了する場合、受任から終了まで概ね4ケ月~5ケ月程度の期間が必要となります。

但し、賃借人が行方不明の場合などを除き、強制執行の断行手続に至るケースは多くありません。訴訟提起後、強制執行手続に至るまでに退去するケースの方が圧倒的に多いというのが実情です。
弁護士が家主様の代理人に就任したことにより、1カ月程度で退去に至るケースもあります。
これらの早期解決案件を含めた弊事務所での平均解決期間は、受任から概ね4ケ月程度です。

【2022年10月11日更新】

司法書士に頼むのとどう違うのですか?

建物明渡請求訴訟について、司法書士は原則として代理人になれません。

弁護士と司法書士の違いは、端的にはその権限に違いがあります。

弁護士は、すべての訴訟事件について代理人として活動することができます。
他方で、司法書士は、訴訟事件について原則として代理人となる権限がありません。
認定を受ければ訴額140万円以下の事件について代理人として活動することはできます。しかし、その場合でも、簡易裁判所の事件での代理権しかなく、地方裁判所での代理権限はありません。
不動産明渡請求訴訟は地方裁判所が管轄です。司法書士は地方裁判所における代理権がありませんし、強制執行手続きについては、司法書士は代理人にはなれません。
不動産明渡請求については、司法書士が大家様や管理会社様に代わって借主と交渉することもできません。

借り主がどこに行ったか不明で連絡も取れないのですが、それでもお願い出来ますか?

可能です。法的手続きを進めるうえで大きな問題はありません。

借り主が所在不明で連絡も取れないということは、もはや話し合いでは解決できません。法的手続きを執るしか無い場合がほとんどだと思われます。
そのような場合に適した法的手続きを進めることで、ほとんどの場合、強制的に退去させることが出来ます。
但し、連絡も取れない場合には、家賃の回収については困難な場合がほとんどです。

手続き中、借主が直接自分の所に来て話したいと言ってきた場合にはどうしたらよい?

毅然と拒否し、弁護士と話すよう伝えて下さい。

弁護士が受任した場合は、全て弁護士を通していただく必要があります。大家さんご本人が直接話すとどうしても甘いことを言ってしまったりして、それを逆手に取られ、状況がこじれることがあるからです。
我々が借主様からお話を伺った場合には、通常依頼人たる大家様にご報告申し上げ、それで対応を協議するという形になります。
ご依頼頂いている以上、「弁護士を通してほしい」と言って頂いて構いませんので、まず直接の話し合いは避け、弁護士と話すように伝えてください。

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