【建物明け渡し(立ち退き)解決事例】離婚協議中の夫から購入した物件につき、占有する妻に対して明け渡しを請求した事例
【物 件】東京都内の区分所有マンション
【特 徴】離婚協議中の夫婦の夫から購入した物件につき、妻が占有継続
【手 続】訴訟提起後、訴訟上の和解
【解決内容】引っ越し費用相当額の支払と引き換えに物件の明渡
1.離婚協議中の夫が物件を売却
物件は東京都内の区分所有マンションです。
問題の区分所有マンションは夫が住宅ローンを組んで購入した物件で、夫の単独名義でした。そのマンションに夫婦でお住まいでした。しかし、その後夫婦仲が悪くなり、夫は家を出て別居するに至りました。
別居後、住宅ローンの支払が苦しくなり、夫は物件を手放し第三者に売却しました。
その後、物件を取得したオーナー様が、居住する妻に対して明け渡しを求めましたが、本来夫婦共有財産であるから明渡が不当であるとして明渡を拒否されました。そこで、弊事務所に相談があり、妻に対する明渡請求を受任しました。
2.内容証明郵便の送付及び明渡訴訟の提起
まず、妻に対して内容証明郵便にて物件の明渡を求めました。しかし、占有者である妻は、マンションは本来夫婦共有財産なのだから居住する権利がある、明渡請求は権利の濫用である、として明渡を拒否しました。そこで、速やかに明渡訴訟を提起しました。
3.明渡と解決金の支払を内容とする訴訟上の和解成立
訴訟提起後も、妻はマンションが本来夫婦共有財産であるとして明渡を拒否し、その旨裁判官に主張していました。
しかし、裁判官は妻の居住権に関する主張を認めず、また、権利の濫用になるとも考え難いと考えているようでした。裁判官からは、当事者双方に対し、オーナー側が引っ越し費用を一部出して、妻が退去する内容の和解を勧告されました。
妻は抵抗していましたが、最終的には、オーナーが引っ越し費用相当額を支払い妻が物件を明渡す内容の和解が成立し、その後、物件の明渡が完了しました。
4.結婚中に購入したマンションの権利関係
本件においては、妻より「夫婦共有財産だからマンションに持分を有している。したがって、第三者への売買は無効である」との主張が展開されました。
しかし、一般的に、財産分与の対象となりうる財産について、配偶者の一方は他方に対して財産分与を求めうる法的地位を有するにすぎず、配偶者名義の財産について当然に所有権を主張できるわけではありません。
今回のようなケースでも、妻は夫に対してマンションの所有権を主張することはできないものと考えられます。したがって、夫は自分名義のマンションを妻の承諾なく自由に処分することができ、マンションを購入した第三者は、占有する妻に対して明け渡しを請求することができるということになります。
5.まとめ
夫婦が別居したのち、住宅ローンの支払が苦しくなり物件を手放さざるを得ない場合があります。その際、物件を取得した第三者から占有する他方の配偶者に対して明け渡しを請求(所有権に基づく明渡請求)することができ、特別な事情が無い限り明渡は認められると考えます。
本件のようなケースについて対応しておりますので、お困りの方はぜひ弊事務所にご相談ください。
※守秘義務の観点から、事案の趣旨を損なわない限度で実際の事案とは内容を変更しています。