【建物明け渡し(立ち退き)解決事例】夜逃げした入居者に対する明渡訴訟
【物件】福岡市内のワンルームマンション
【借主】夜間の飲食業に従事する20代女性
【特徴】家賃滞納後夜逃げ状態で所在不明
【解決内容】強制執行
【解決までの期間】受任から4か月程度
1.夜逃げした借主
物件は福岡市内のワンルームマンションです。借主は夜間の飲食業に従事する20代の女性です。
借主が家賃を2か月滞納した段階で、管理会社が物件を訪問したところ、部屋の電気メーターは停止した状態であり、ポストにも郵便物が大量に溜まっていました。借主本人とも連絡がとれず、緊急連絡先である親族も、借主本人と連絡がとれないとのことでしたので、室内で倒れている可能性を考え、警察官立会のもとで部屋の鍵を開錠し、中を確認しました。すると、大型の家財道具が残されていたものの、部屋での生活感はなく、衣類も残されていないという夜逃げ同然の状態でした。
そこで、当事務所に明渡請求の依頼がありました。
2.明渡完了までの経緯
借主が夜逃げ同然で全く電話連絡が取れない状況であっても、郵便物の転送により連絡がついたり、その所在を確認できることがあります。弁護士より、物件宛に、家賃滞納を理由とする契約解除通知書を送付しましたが、郵便物は宛所尋ねなしで返送されました。
そこで、裁判所に明渡請求訴訟を提起し、1か月半後に借主に対して明け渡しを命じる判決が下されました。なお、所在不明のため、借主に対する訴状の送達は公示送達により行われました。
判決取得後、当事務所にて直ちに強制執行を申し立てました。
一般的に、建物明渡の強制執行は、①執行官による明渡催告(明渡期日を決めて明渡を勧告する)、②明渡催告によっても明渡がなされない場合には断行手続(建物から強制的に借主の荷物等を撤去するともに鍵を交換して借主の占有を排除する手続)に進む、という流れをとります。しかし、本件では、借主が所在不明であったことから、申し立てから約10日後に、明渡催告を経ることなく、断行手続がとられ、断行により明渡が完了しました。
3.夜逃げした借主に対する明渡対応のポイント
(1) 借主が夜逃げにより所在不明であっても、賃貸借契約を解除する旨の内容証明郵便を送付するのが一般的です。なぜなら、郵便物が転送されて連絡がつくことがありますし、郵便物の転送先郵便局をもとに、その所在を把握できることがあるためです。
(2) 借主が所在不明の際には、強制執行申立時において、「催告手続をとることなく即時に断行手続をされたい」旨の意見を裁判所に伝えることを検討すべきかと思います。これが受け入れられた際には、催告手続をとることなく断行手続に進みますので、早期に明け渡しを完了させることができます。
(3) 夜逃げした借主に対する明渡請求は、とにかく時間がかかると思われがちですが、経験豊富な弁護士に依頼することで迅速に明渡を完了させることができます。是非弁護士にご相談ください。