【建物明け渡し(立ち退き)解決事例】賃借物件内で借主が死亡していた事例

【物件】首都圏郊外の一軒家
【借主】50代男性
【滞納月数】3か月
【特徴】連絡がとれなくなりその後家賃滞納
【解決内容】親族にて荷物を撤去し明渡完了
【解決までの期間】受任から5か月

1.事案の概要

 物件は首都圏郊外の一軒家です。
 借主は、物件に住み始めたときから定職についており、長年にわたって居住していました。家賃滞納は一切ありませんでした。
 しかし、突然連絡が取れなくなり、また、家賃滞納が生じるようになりました。家主や管理会社、親族が訪問するも、応答がありません。また、携帯電話も電源が入っておらず、就業場所に問い合わせるも無断欠勤が続いているとのことでした。
 滞納金額が3か月を超えたことから明渡訴訟提起の依頼がありました。

2.経過

 賃貸借契約を解除し明渡を求める内容証明郵便を送付しても受取が無く、不在として返送されました。そこで、借主に対して建物明渡訴訟を提起しました。訴訟提起後、裁判所から借主宛に訴状の特別送達が試みられましたが、不在で戻ってきました。
 管理会社が物件訪問した際にも応答がありませんでした。ライフラインも止まっており、郵便物も溜まっていたことから、行方不明と判断しました。
 そこで、公示送達の方法により訴状を送達し、裁判所の判決を経て建物明渡強制執行を申し立てました。
 強制執行手続は、一般的に、執行官催告(執行官が明渡期日を指定する手続)→強制執行断行(裁判所の権限で強制的に鍵を交換し、荷物を撤去して明渡完了とする手続)という流れで行われます。この執行官催告の際に、室内で亡くなっている借主が発見されるに至りました。すぐ警察・消防に通報のうえ、借主は病院に搬送されました。その後葬儀が行われたようで、間もなくして親族の方が中の荷物を完全に撤去し、明渡完了となりました。

3.弁護士コメント

 本件は、借主が室内で死亡しており、そのことが強制執行催告時に明らかになったという事例です。
 この場合、債務者が死亡していることから、親族の方が室内の荷物を撤去し、諸々の費用を支払ったうえで明渡完了と整理することが多いと思います。
 厳密にいえば、借主の相続人に賃借権(及びこれに基づく明渡義務)が承継される結果、明渡義務(目的物返還債務)を承継する相続人が明渡を行う必要があります。しかし、相続人ではない親族であっても、いわゆる民法上の事務管理や債務引受により、相続人の明渡義務を履行する(費用負担は相続人と事実上明渡義務を履行した親族で処理する)と整理することにより、法的な明渡義務が履行されたと整理できる場合も多いと考えます。
 他方、家主が、親族などに無断で中の荷物を撤去することは、自力救済として原則として違法となると考えられます。但し、賃貸借契約書に契約終了後の残置物放棄条項などが盛り込まれており、かつ、部屋の中の状況などに鑑みて、家主が自ら中の荷物を撤去することが違法と評価されない場合もあると考えます。
 借主が死亡した場合で、かつ、親族等の協力が得られない場合については、様々な対応が考えられます。建物明渡に精通した弊事務所にご相談頂き、最善の方法を一緒に考えていきましょう。

記事カテゴリ: 解決事例
投稿日時: (約2年9ヶ月前)

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よくあるご質問

見積もりを取ることは可能でしょうか?

ご相談いただければ可能です。

ご相談内容を踏まえてお見積りさせていただきます。
見積もりは無料となっております。事案によって請求額は異なりますので、まずはご相談ください。

退去してもらうまで、どの程度の時間がかかるものでしょうか?

当事務所での解決までの平均期間は、4か月程度です。但し、弁護士が受任したことで、1カ月程度の早期解決に至ることもあります。

家賃滞納による明渡請求は、家賃滞納自体に争いが無い場合には、強制執行手続による退去完了まで、以下の経過をたどります。

  1. 内容証明郵便による契約解除通知送付(受任から3日~1週間程度)
  2. 訴訟提起(内容証明郵便送付日の翌日~2週間程度)
  3. 第1回期日(訴訟提起日から1ケ月~1ケ月半程度)
  4. 判決期日(第1回期日から1週間~2週間程度)
  5. 強制執行申立(判決期日から2週間~1ケ月程度)
  6. 断行手続(強制執行申立から1ケ月~1ケ月半程度)
  7. 退去完了

強制執行手続のうち、断行手続(裁判所の手続により、荷物を搬出・鍵の交換等を行う等の方法で強制的に明け渡しを実現する手続)によって退去が完了する場合、受任から終了まで概ね4ケ月~5ケ月程度の期間が必要となります。

但し、賃借人が行方不明の場合などを除き、強制執行の断行手続に至るケースは多くありません。訴訟提起後、強制執行手続に至るまでに退去するケースの方が圧倒的に多いというのが実情です。
弁護士が家主様の代理人に就任したことにより、1カ月程度で退去に至るケースもあります。
これらの早期解決案件を含めた弊事務所での平均解決期間は、受任から概ね4ケ月程度です。

【2022年10月11日更新】

司法書士に頼むのとどう違うのですか?

建物明渡請求訴訟について、司法書士は原則として代理人になれません。

弁護士と司法書士の違いは、端的にはその権限に違いがあります。

弁護士は、すべての訴訟事件について代理人として活動することができます。
他方で、司法書士は、訴訟事件について原則として代理人となる権限がありません。
認定を受ければ訴額140万円以下の事件について代理人として活動することはできます。しかし、その場合でも、簡易裁判所の事件での代理権しかなく、地方裁判所での代理権限はありません。
不動産明渡請求訴訟は地方裁判所が管轄です。司法書士は地方裁判所における代理権がありませんし、強制執行手続きについては、司法書士は代理人にはなれません。
不動産明渡請求については、司法書士が大家様や管理会社様に代わって借主と交渉することもできません。

借り主がどこに行ったか不明で連絡も取れないのですが、それでもお願い出来ますか?

可能です。法的手続きを進めるうえで大きな問題はありません。

借り主が所在不明で連絡も取れないということは、もはや話し合いでは解決できません。法的手続きを執るしか無い場合がほとんどだと思われます。
そのような場合に適した法的手続きを進めることで、ほとんどの場合、強制的に退去させることが出来ます。
但し、連絡も取れない場合には、家賃の回収については困難な場合がほとんどです。

手続き中、借主が直接自分の所に来て話したいと言ってきた場合にはどうしたらよい?

毅然と拒否し、弁護士と話すよう伝えて下さい。

弁護士が受任した場合は、全て弁護士を通していただく必要があります。大家さんご本人が直接話すとどうしても甘いことを言ってしまったりして、それを逆手に取られ、状況がこじれることがあるからです。
我々が借主様からお話を伺った場合には、通常依頼人たる大家様にご報告申し上げ、それで対応を協議するという形になります。
ご依頼頂いている以上、「弁護士を通してほしい」と言って頂いて構いませんので、まず直接の話し合いは避け、弁護士と話すように伝えてください。

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