【建物明け渡し(立ち退き)解決事例】5年以上の多額の滞納が生じていた案件について、約3年分の滞納賃料を一括で回収したうえで明渡を受けた事例
【物 件】東京都下の一軒家
【借 主】個人
【滞納月数】5年以上
【特 徴】賃借人が「近いうちに入金がある」と家主に対し支払猶予を求め、家主もこの申出を信じていたが、5年以上同じ状況が続いた。さすがにしびれを切らした家主が滞納家賃の支払と明渡訴訟を提起したところ、家賃滞納を知った妻が問題解決に奔走したことにより早期解決に至った事例。
【解決内容】任意退去(強制執行に至るまでに問題解決)
【解決までの期間】受任から6か月
1.事案の概要
対象物件は東京都下の一軒家です。平成初期以来、30年以上の長年にわたり賃貸していましたが、ここ5年間は支払が滞納していました。賃借人は、「経済産業省関連の大きなビジネスに関与することができた。半年後には数千万円の入金があるからその際にまとめて支払う」と言って家主に支払猶予を求めてきたのを皮切りに、5年以上滞納を続けていました。長年物件を借りてもらっていたこともあり、明渡を求めることはせずに待っていました。しかし、さすがに5年もの長期になり、しびれを切らした形で弊事務所(赤坂門法律事務所)に相談がありました。
2.経緯
借主に対して賃貸借契約を解除するとともに滞納家賃の支払を求める内容証明郵便を送付したところ、その2~3日後に奥様から電話がありました。奥様は、賃料滞納のことを全く知らず、大変驚いている様子でした。借主の奥様からは、「夫と相談する。少し時間がほしい」とのことで少し待っていましたが、そのうちに電話をかけても応答して頂けなくなりましたので、内容証明郵便を送付した約1か月後に訴訟提起しました。
訴訟提起後、借主側に代理人弁護士が就任し、建物は早急に明け渡す、滞納賃料については親族の援助を得て一括で支払うので、一部減額されたい旨の打診がありました。これに対しては、「明け渡しを先行して頂ければ減額を検討する」旨回答し、その後、本件建物の明渡後に金額交渉のうえ、5年分の滞納家賃のうち、3年分(約300万円)を一括で支払うことで合意しました。
なお、代理人弁護士によれば、借主(夫)は家賃滞納のことをずっと家族に隠していたようで、滞納が発覚した後は奥様が主導して問題解決に奔走されたとのことでした。
3.弁護士コメント
本件は、長年賃貸していたこともあり、借主(夫)の「近いうちに入金がある」との言葉を信じた結果、滞納期間が長くなってしまった、という事例です。また、借主(夫)が家賃滞納を家族に知らせておらず、家賃滞納を知った奥様が問題解決に尽力したことにより、早期解決に至った事例でもあります。
借主である夫が妻に対し、長年にわたる家賃滞納の事実を知らせておらず、契約解除の内容証明郵便によってはじめて家賃滞納の事実を知る、というのはよくある話です。妻に家賃滞納の事実を言いづらいその気持ちはよくわかりますし、家主としても長年の信頼関係があるとついつい猶予をしがちですが、これだと問題解決は遠のきます。今回は奥様が問題を把握したことにより早期解決に至ったことから分かるように、客観的な通知書を送付したり、法的措置をとることが有効な場合があります。
長期の滞納にお悩みの家主様に参考になる事例かと思い、紹介させて頂きました。
※守秘義務の関係上、全体の趣旨を変えない範囲で、事案の内容や固有名詞等を変更しています。